『ケララ秘伝
暮らしのアーユルヴェーダ』
伊藤武・田村ゆみ共著
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『アーユルヴェーダと〇〇 vol.1 パンチャカルマ基本編』田村ゆみ著
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今回ご紹介するアーユルヴェーダの家庭薬は、パキスタンの複数の病院で約300名のコロナ患者さんを対象に治験を行った結果、改善までの期間が大幅に短縮されたというもの。
材料は、たったの2つ!
ニゲラシード(カロンジ、ブラッククミンと呼ばれることも)と ハチミツ。
ニゲラとハチミツの組み合わせを選んだ理由は「どちらも抗ウイルス作用、抗菌作用、抗炎症作用、免疫調節作用があるから」とのこと。
ニゲラシードは聞き馴染みがないという方も多いと思いますが、インド食材店やオンラインで簡単に入手できるスパイス。
辛味と苦味のある独特な風味に、さくっとした不思議な食感があります。
東インドをメインに、スパイスミックス”パンチフォロン Panch phoron”としても使われています。
(地方別パンチフォロンの呼び名:ベンガル Paanch Phoran、オリッサ Pancha Phutana、アッサム、Pas Puron、マイティル Painch Phoranah、ネパール Padkaune Masala)
ニゲラシードは、Indian Medicinal Plantsによると、刺激、駆風、利尿、通経、催乳作用がある。産褥熱に用いる。種子の粉末は、外用で腫れ物に使うとあります。
学名:Nigella sativa
英語名:Black Cumin, Small Fennel
アーユルヴェーダ名:Kaalaajaaji, Kalikaa,Prthvikaa, Sthulajiraka, Sushavi,Upkunchikaa (the plant bears seeds of bigger size).
ユナニ名:Kalonji, Kamaazaruus.
シッダ名:Karum seeragm.
さて、臨床試験では、中等症〜重症患者さんに、標準治療と併用してニゲラ蜂蜜が投与されました。
約半数の患者さんには、プラセボ(偽薬)を投与。
多臓器不全、人工呼吸器をつけている場合、慢性疾患(糖尿病と高血圧を除く)を有する患者さんは、この試験から除外したとのこと。
結果として
HNS significantly improved symptoms, viral clearance and mortality in COVID-19 patients. Thus, HNS represents an affordable over the counter therapy and can either be used alone or in combination with other treatments to achieve potentiating effects against COVID-19.
CONCLUSION|Honey and Nigella sativa against COVID-19 in Pakistan (HNS-COVID-PK): A multi-center placebo-controlled randomized clinical trial|medrxiv.org/
HNSは、COVID-19患者の症状、ウイルス排除、死亡率を有意に改善した。したがって、HNSは手頃な市販の治療薬であり、COVID-19に対する増強効果を得るために単独で、あるいは他の治療薬と組み合わせて使用することができる。
試験方法や結果の詳細は、論文Honey and Nigella sativa against COVID-19 in Pakistan (HNS-COVID-PK): A multi-center placebo-controlled randomized clinical trialで確認してくださいね。
日常的に使われているスパイスとハチミツという組み合わせだからこそ、手軽に入手でき、作るのも容易、安価で、さらに標準治療と併用できるというのがすばらしい!
はちみつ 1g + ニゲラ 体重1kgに対し80mg
1日 2〜3回にわけて、13日間投与
体重1kgに対し、ニゲラ 80mgで換算すると、
となります。ただしアーユルヴェーダ医の処方なく摂る場合は、インドのアーユルヴェーダ薬局方(THE AYURVEDIC PHARMACOPOEIA OF INDIA)に粉末にした種の1日の摂取量は1-3gと書かれているので、最大で3gに抑えると安心でしょうね。
ちなみに、小さじ1/2で1.5gでした。
ニゲラ 小さじ1/2で1.5g
以前ニゲラでお菓子を作って、空腹時にたくさん食べたら、しばらくしてから胃もたれしました。10gほどだったはず。
もっとたくさん食べて調子が良かったという人もいましたが、慣れないものは少量で試してみるのが安心。
AROUND INDIAが、このパキスタンの試験でおどろいたことが、もう一つ。
アーユルヴェーダの古典には、”高熱のときは、ハチミツを摂らないように”と書いてあるのです。
それが、この試験では高熱の人にも投与して、良好な結果が得られているというのです。
古典が書かれた当時のハチミツの加工方法が違う可能性もあるし、伊藤武せんせいがおっしゃるように「夾竹桃のような毒のある植物から採ったハチミツを食べて亡くなった」りしたなどが起因して、ダメだと書かれていたのかもしれません。
たしかに、悪影響をおよぼす可能性があるのならば、加熱したり、発熱している人が食べない方がいいとも言える。
でも今回の試験で、発熱のある大勢に投与して良い結果が得られていたというのは、ハチミツに対する説が増える歴史的なお話かもしれません。
パキスタンの論文では、ニゲラのみ、ハチミツのみでは試験が行われなかったとのことなので、ハチミツと合わせたニゲラの相乗効果によるものという可能性も残ります。
その点についてはまだわかりませんが、ただここで言えるのは、ニゲラ蜂蜜は発熱時にも良いだろうということ。
※ 1歳未満のお子様にはハチミツを与えないでください
ニゲラは、Amazonでも入手できます。
カルディーや成城石井には売ってなかったと思います。
もうちょっとマニアックです。
インド、ネパールなどの食材店には売っています。
ニゲラで通じなかったら、カロンジ、ブラッククミン、カラジーラと言えば通じると思います。
(ブラッククミンについては諸説あり。こちらについてはまた別記事で)
今回は乳鉢で粗めに潰して、チャーミークリアに保存しました。
必要なときに、ハチミツと混ぜて舐めるだけ。
1回目。ニゲラと蜂蜜をよく混ぜました。
ちょっとクセのあるニゲラの味が主張して、ほんのりプールの塩素を思い出しました。
2回目。混ぜ込むのではなく、ハチミツで包むようにしてみました。
こちらの方が、食べやすい。
なんとも簡単。
こういうアーユルヴェーダ大好き。
Indian Medicinal Plants