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ギー GHEEとは、近年日本でも人気が高まっている油脂です。
基本的には牛乳を原料としたもの。不純物を取り除いたバターなので、澄ましバターとも呼ばれています。
アーユルヴェーダでは、あらゆる脂肪質においてギーが最も良いものとされています。
基本的に牛乳といったのは、水牛、ヤクなどの乳から作るギーもあるからです。
古典Astanga Hridayamには、牛の乳から作ったギーが一番良く、羊の乳から作ったギーが一番良くないと記されています。
南インド・ケララ州の伝統武術カラリパヤットゥの世界では、豚や蛇のギーも登場するのです。
蛇のギー snake ghee‥。厳密にはギーではないでしょうが、どうやって作るんでしょうね。
アーユルヴェーダには、丸薬、薬酒、煎じ薬、ペースト(ジャム)、オイルなど、さまざまな種類のお薬の形状があります。そのうちの一つがギーです。
薬草の成分をギーに閉じ込めて、不妊、眼病、滋養強壮などに良い、さまざまなギーができあがります。
例えば、Sahasrayogamに掲載されているギー製薬のレシピは59種類。
古いギー(Purana ghritam)や、100回洗ったギー(Shatadhauta ghritam)など、薬効を高める方法もあります。
パンチャカルマという浄化療法では、最初に体にこびりついた汚れをゆるめるためにギーをよく用います。日常ではありえないくらい、体の中から潤いが溢れ出します。
目の周りに土手を作り、ギーを目に満たすトリートメント(Netra tarpanam ネトラタルパナム、ネトラヴァスティ、眼浴)も有名です。
ギーは、内服にも外用にも用います。
お薬のギーとは違い、料理に使われているギーは基本プレーンです。
ギーは、牛乳から取れるエッセンス。家庭で作るには大量の牛乳と手間が必要です。
そのため、現代のインドでは、市販品を購入することが多くなっています。
ギーをたくさん使うことで有名なのが、北インド・パンジャブ州。デリーで働く若いパンジャブ女性たちは「デリーではあまりギーを使わないから痩せる」「(パンジャブでは)大人になると太るのよ」と言っていました。
南インド・ケララ州では、お菓子作りに使うことが多いです。日常的に消費するのはココナッツオイル。ギーは味がリッチになり、値段も高級です。
他にも、お寺で護摩にギーを使ったり homam、オイルランプ、神様の像にかける abhishekamなど、不純物のない聖なる油としての使われ方や、アイライナー作りなど、ケアにも用いられています。
ギーには、こんなにも多くの効能があると言われています。
ギーの中にも良いもの/良くないものがあります。
良いギーは、元気な牛の乳から、本来の製法にのっとって作られたもの。
良くないギーは、乳から作られていないフェイクギーと呼ばれるもの。
ギーと名が付いていますが、実際にはギーではありません。
フェイクギーは、ギーのようなリッチな風味はもたらすかもしれません。
でも、ギーの良い部分、すなわちアーユルヴェーダにおける一番良い脂肪分である、先述のような効能は得られないのです。
フェイクギー(ヴァナスパティギー vanaspati ghee、ベジタブルギー vegetable ghee、ギーオイル ghee oil)は「健康的!安い!」を謳い文句に、インドで広く出回りました。
糖尿病、肥満、精神疾患、心疾患、ガンなどの健康被害が出たため、パキスタンのPunjab Food Authority (PFA)は、2020年7月までに使用禁止するよう発表しました。
パキスタンでは、フェイクギーの使用は2020年7月で禁止
Punjab Food Authority (PFA)
多くのフェイクギーは、ギーと同じように低温で固まる価格の安いパーム油などをベースに、ギーのような色や香りをつけて作るのだそうです。
本物のギーは常温で長く保存できますが、フェイクギーは変質してしまうので保存料や酸化防止剤などを添加するのが一般的。
アーユルヴェーダを習って帰国した2008年ごろ「ギーなのにすごく安い!!」とまちがえて買ってしまったことがありました。
味も香りもギーではなく、料理が台無し‥。後味も悪くて、さよならしました。
フェイクギーの中にも健康に悪くないものもあると思いますが、ギーではないのでギーの効果は望めません。
インドの菜食主義者はギーや牛乳を摂ることが多いですが、日本や欧米のベジタリアンやビーガンの方は、動物性食品全般を避けるのが一般的ですよね?
あえて「ギーではないギーのようなもの」を使う必要性は感じられないので、質の良い植物油を選んでみては?
ギーには、発酵乳から作ったものと、牛乳から作ったものがあります。
発酵という手間を減らすために、市販のギーはほとんど無発酵のようです。
AROUND INDIAが現地で教わったのは、家庭も製薬の授業でも発酵バージョンでした。
乳→ヨーグルトにする→水を足して撹拌する→脂肪分を集める→炒める→発酵ギーのできあがり
牛乳の上に溜まったクリーム状のもの(マライ)を集める→加熱する→無発酵ギーのできあがり
バターから作る方法も、多くは無発酵ギーになりますね。
インドで友人たちに調査をしたところ、品質の良いギーは、信頼できるコミュニティーから直接買い求めていると言う意見が多かったです。
インドの市場で出回っている90%以上のギーは正しい製法で作られていない
あるケララのアーユルヴェーダドクター
スーパーでも買えるギーですが、昔ながらの良質なものを手に入れるのは、インド人でも苦労しているようです。
シンガポールのインド人街で、良質なギーを探してみました。
現地人、ちょうど友人宅を訪問していたアーユルヴェーダやヨガに詳しいケララの友人、シンガポールで働くケララ人たちに協力してもらいました。
でも見つけられませんでした。
巨大インドスーパー”ムスタファセンター”、インド人街、イスラム人街にもありませんでした。
AROUND INDIAがインドで購入する場合、クラフトマーケットなどで生産者から直接購入、もしくはオーガニック食品を扱うお店を利用することが多いです。
偽物が多いので、家庭で見分ける方法も広まってきています。
日本で買えるギーをチェックしてみましょう。
最近はamazonでも多く取り扱われるようになりました。
選ぶときのヒントは、Desi ghee デシギー、organic オーガニック、traditional 伝統、churn 攪拌、grass fed 草を餌にして育ったなどと書かれているものが、比較的正直に作られていると思います。
出来る限り、製造工程なども確認するようにしています。
アメリカのお店 iherbにも、ギーの取扱いはたくさんありますが「この商品は日本へ発送できない」と注意書きが出る場合が多いです。
ギーは、家庭でも簡単に作ることができます。
市販のギーを食べて苦手だった方でも、家庭でバターから作ると結構おいしくいただけると思います。
ぜひチャレンジしてみてくださいね。
6の工程で、カレーリーフを入れるご家庭も。
いざギーを買ってみたものの、使い方がわからずに放置していませんか?
もったいないので積極的に使ってみましょう。
ちなみに、ギーを大さじ1杯入れたホットミルク…といったドリンクに入れる方法が西洋から?広まっていますが、わたしは苦手。
パンチャカルマのときに、お薬として飲むだけで充分!!
ギーの味が苦手な人は、クセのない味のギーを選びましょう。
自家製なら問題ありません。
簡単な使い方は、バターの代わりとして使う方法。
沸点が高く焦げづらい性質があり、炒め物に使いやすいのです。
オムレツやスクランブルエッグなど、卵料理とも相性がいいです。
ホームベーカリーでパンを焼く時にも、バター代わりに入れてます。クセのないギーなら、ギーが苦手な人にも気づかれません。
でも、クセのあるギーを入れると、全体においしくないギー風味が広がって、食べるのがきつい残念な味になってしまいます。まずはギー自体を味見してから使うのが安心です。
トースト、ホットケーキ、ワッフルなど温かいところに少量のギーを塗って、メープルシロップなど味があるものと合わせるのも人気です。
シナモントースト用に、シナモンギーはいかがでしょうか?
作り方は簡単!ギーとシナモンと砂糖をよく混ぜて、一晩以上おくだけ。
トーストに塗るだけでできあがり。
北インドのレシピで豆カレーを作って、最後に溶かしたギーをかけるのもおすすめ。
チャパティなどの平焼きパンにも、食べる直前に溶かしたギーをかけるのがよく合います。
バナナ、ギー、パパダムを混ぜて食べるのもおいしいです。