もくじ
伝統医師ヴァイディア の不思議なお薬の話
ヴァイディアとは?
ヴァイディア(Vaidya、ワイディヤ)とは、伝統的なアーユルヴェーダドクターのこと。
AROUND INDIAの田村ゆみです。
わたしは、小さいころから「ほくろ」ができやすい体質でした。
眉間のほくろが目立つので、小学生の頃は「インド人」とからかわれたりしたのも、今となっては不思議な偶然。
インド人は、あまりほくろが無いように思います。
わたしのほくろを気にかけてくれていた伝統武術 カラリパヤットゥ 道場のマネージャーが、
「すごい薬があったよ!次にカヌールに来る時に行こう」
と連絡をくれました。
彼自身も知り合いの紹介だったそうで、首にあった無数の小さないぼが、数日で取れたというのです。
その薬を作るドクターは、ヴァイディアと呼ばれるアーユルヴェーダ医師です。
ヴァイディア(Vaidya、ヴァイジャ、वैद्य)とは、サンスクリット語。英語に訳すとphysician(医者)なのですが、ここでは伝統的なアーユルヴェーダドクターのことを指します。
アーユルヴェーダが根付くケララ州でさえ、学校で学んでドクターになることはできても、本来のヴァイディヤになることはできないという貴重な存在なのだそう。
今回お会いするヴァイディヤが作っているのは、ほくろ(いぼ)を取る薬。
それは秘伝で、世界中でその先生しか作ることができません。だから名前もないお薬なのだそう。
こういうもののことを、ケララではオッタムリと呼ぶそうです。
今回わたしにはあまり時間がなく、先生を訪ねるチャンスはたった一日!
原料採集のために薬局を留守にすることも多いと聞いていたのですが、その日は薬局にいらっしゃるとのこと!よかった!!
アーユルヴェーダ雑学:ちゃんとしたアーユルヴェーダ薬局には、基本的に医師が常駐しています。
待ちに待ったヴァイディアの薬局 1回目
お迎えに来てくれたマネージャーが、首のいぼを見せてくれました。
きれいに無くなっています。彼もあまりに簡単で驚いたそうで、今度は他の部位もお願いするとのこと。
車で、ヴァイディアの薬局へ向かいました。
車を駐め、車道脇の階段を降り、橋をくぐって川沿いを歩くと、古い小さな薬局に着きました。
薬局にいらしたのは、ヴァイディアお一人。
原料を集め、お薬を作り、患者さんを診て、処方・販売する。すべてお一人でやられているようでした。
まずはマネージャーが、ヴァイディアに私のほくろのことなどを現地のマラヤラム語で説明してくれ、日差しの下で様子をチェック。
そしてお薬の準備を待ちます。
わたしは、薬局の内外を興味津々にうろうろ探索。原料がゴロゴロあり、先ほどまで製薬なさっていたようでした。
お薬の用意ができたら、また日差しの下へ移動。その場で塗布してくださいました。
続いてマネージャーも、診察と処方を受けました。
途中、ご近所の若い男の子が薬を買いに来ました。
わたしたちにしてみれば特別なヴァイディヤでも、ご近所の人にしてみれば、昔からある普通のアーユルヴェーダ薬局なのでしょうね。
インドで塗布、日本で塗布、結果
薬を塗るのは、朝晩2回。
膨らみがあるタイプのほくろにしか使用できません。
えんじ色のペースト、黄色い液体、えんじ色の粉末の3種類を混ぜます。作りたてを使わなくてはならないので、余っても次回に持ち越しません。
日によって、部位によって、チリチリっと焼けるような痛みがありました。
ほくろは、少しずつ固く乾燥して縮むような感じなり、遂にはかさぶたのように取れました。
ほくろ/いぼの種類によって、膨らみが取れて色が薄くなったり、全体的に無くなったり、少し赤みが残ったり、しばらくするとまた出てきたりと結果はさまざまでした。
小さないぼは、数日の塗布で簡単に取れました。マネージャーは約1週間で大きなほくろが取れたそうです。
次回もまたヴァイディヤに診ていただきたいと思います。
不思議なお薬でした。世界中にここにしかないお薬。いつまで手に入るのかわかりません。
そんな秘伝が無数にあるのです。教える先生がいて、教わる生徒の資質が備わったときだけに授けられる薬のレシピや治療法が存在していて、受け継がれていくものと消え行くものがあるのです。
アーユルヴェーダ、楽しいです。