「ケララ秘伝 暮らしのアーユルヴェーダ」
伊藤武・田村ゆみ共著
アーユルヴェーダ自然のお薬11:世界で作れる先生はただ一人。ほくろの取れる薬
伝統医ヴァイディア の不思議なお薬の話
ヴァイディアとは?
ヴァイディア(Vaidya、ワイディヤ)とは、伝統的なアーユルヴェーダドクターのこと。
AROUND INDIAの田村ゆみです。
「ほくろ」ができやすい体質だったわたしは、眉間のほくろが目立っていたので、小学生の頃「インド人」とからかわれたりしました。
インド人を見ていると、ほくろがあまりありません。
そのため、伝統武術 カラリパヤットゥ 道場のマネージャーが、わたしのホクロを気にかけてくれていて、ある日「すごい薬があったよ!次カンヌール(カヌール)に来る時に行こう」
と連絡をくれました。
彼自身も知り合いの紹介でその先生のところに伺ってみると、首の小さなイボたちが数日で取れたというのです。
その薬を作るドクターは、ヴァイディアと呼ばれるアーユルヴェーダ医師です。
ヴァイディア(Vaidya、ヴァイジャ、वैद्य)とは、サンスクリット語。
英語に訳すとphysician(医者)なのですが、伝統的なアーユルヴェーダドクターのことを指します。
アーユルヴェーダが根付くケーララ(ケララ)州では「学校で学んでドクターになることはできても、ヴァイディヤになることはできない」と言います。資格ではなく、真に医術に長けた存在にこの称号を用います。
今回お会いするヴァイディヤが作っているのは、ほくろ(いぼ)を取る薬。
秘伝のお薬で、世界中でたった一人。その先生しか作ることができません。
だから名前もないお薬なんですって。ケーララ(ケララ)ではこういうものをオッタムリと呼ぶそうです。
あまり時間がなかったので、先生を訪ねるチャンスはたった一日!
「原料採集のために薬局を留守にすることも多い」と聞いていましたが、その日は運良く薬局にいらっしゃるとのこと!よかった!!
アーユルヴェーダ雑学:ちゃんとしたアーユルヴェーダ薬局には、基本的に医師が常駐しています。
待ちに待った薬局 1回目
お迎えに来てくれたマネージャーが、首のいぼを見せてくれました。
きれいに無くなっています。彼自身、あまりに簡単に取れて驚いたから、他の箇所もお願いするとのこと。
車を駐め、階段を降り、橋をくぐり抜けて、川沿いを少し歩くと、小さな薬局に着きました
薬局にいらしたのは、ヴァイディアお一人。
原料を集め、お薬を作り、患者さんを診て、処方・販売する。すべてお一人でやられているのだそうです。
マネージャーが私のほくろのことを説明してくれ、日差しの下に行き、ヴァイディアによる診察(視診)を受けました。
お薬を待つ間、薬局内外をうろうろ。原料がゴロゴロあり、つい先ほどまで製薬なさっていたようでした。
お薬の用意ができたら、また日差しの下へ移動。その場で塗布してくださいました。
続いてマネージャーも、診察と処方を受けました。
途中、ご近所の若い男の子が薬を買いに来ました。
わたしたちにしてみれば特別なヴァイディヤ。でも、ご近所の人にしてみれば、昔からある普通のアーユルヴェーダ薬局なのでしょうね。
インドで塗布、日本で塗布、結果
薬を塗るのは、朝晩2回。
膨らみがあるタイプのほくろにしか使用できません。
えんじ色のペースト、黄色い液体、えんじ色の粉末の3種類を混ぜます。作りたてを使わなくてはならず、余っても次回に持ち越すのはNG。
日によって、部位によって、チリチリっと焼けるような痛みがありました。
ほくろは、少しずつ固く乾燥して縮むような感じなり、最後かさぶたのように取れました。
ほくろ/いぼの種類によって、膨らみが取れて色が薄くなったり、全体的に無くなったり、少し赤みが残ったりと結果はさまざまでした。
小さないぼは、数日の塗布で簡単に取れました。マネージャーは約1週間で大きなほくろが取れたそうです。
次回もまたヴァイディヤに診ていただきたいと思います。
世界中にここにしかない貴重なお薬。いつまで手に入るのかわからない。
そんな秘伝が無数に存在しているインド。
教える先生がいて、教わる生徒の資質が備わったときだけ授けられる薬のレシピや治療法が存在していて、受け継がれていくものと消え行くものがあるのです。
アーユルヴェーダ、楽しいです。