『ケララ秘伝
暮らしのアーユルヴェーダ』
伊藤武・田村ゆみ共著
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『アーユルヴェーダと〇〇 vol.1 パンチャカルマ基本編』田村ゆみ著
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アヌパーナ Anupanaは、お薬や食べものと一緒に摂るものです。
Anu アヌ(後)+ Pana パーナ(飲み物)
一般的に日本でお薬を飲むときは、お水もしくはぬるま湯と合わせますよね?
でもインド伝統医学のアーユルヴェーダでは、お薬ごとにアヌパーナが指示されるのです。
どうしてアヌパーナにまでこだわるのかというと、アヌパーナには、固いものを柔らかくしたり、吸収をよくしたり、作用を強めたり、味をよくしたり、副作用を抑えるなどのチカラがあるからです。
たとえば副作用なら、渋味が強いものを摂るときに胃がしくしくするのを抑えたり、辛いものを摂るときに熱くなりすぎないように冷却作用を加えたり、消化不良を防いだりなどがあります。
英語では、アヌパーナをvehicle(車両、由来は運ぶもの)というのですが、わかりやすい表現だと思います。
粉薬をそのままで飲みこむのは、むずかしいですよね?口の中に張り付いてしまったり、口を開けたら粉がぶわーっと飛び散ってしまったり、変な気管に入ってむせたり。
でも、水と一緒に飲む(水という車両に乗せる)ことで、消化管へ入っていき、胃の中でも刺激少なく、吸収しやすく、目的地に到達することができるのです。
アーユルヴェーダでは、特にアヌパーナの指定がないときは「水」を合わせるというルールがあります。
それでは、アヌパーナの種類を見る前に、ちょっと想像してみましょう。
水以外に、どんなものを合わせると思いますか?
子供の頃、シロップをオレンジジュースで割ってもらったなぁ
お湯は平気じゃない?
お茶とかコーヒーは、カフェイン入っているからダメって聞く!
さて、実際にアーユルヴェーダの代表的なアヌパーナを確認してみましょう。
ちなみに、アヌパーナはお薬に明記されていたり、患者さんの状態(ドーシャや病気)などによって決められます。お薬を処方される時は、医師から指示を受けます。
まずはクイズ。次の3つの写真は、AROUND INDIAの家にあったアーユルヴェーダのお薬です。
文章をみて、それぞれのアヌパーナを考えてみましょう。
答えは3枚目の写真の下にあります。
いかがでしたか?
普段の食事と合わせるときのヒントは、古典アシュターンガ・フリダヤムの一説を参考にしましょう。
食べ物の性質とは反対の性質をもっていながら、
古典アシュターンガ・フリダヤム
食物の作用を抑制するものではない
すなわち、食べ合わせは悪くないもので、反対の性質をもつものということです。
性質については、ドーシャやグナも参考にしてくださいね。
先述したように、水は最も広く使われるアヌパーナです。体質や状態にかかわらず使えるうえに、入手しやすいのもポイント。インドでも日本でも、どこでも手に入るというのもいいですね。
チベット医学では、水よりも湯を合わせるようにという指示が多かったです。
この場合も、熱湯ではなくぬるま湯/白湯。弱った体にもやさしく、体を冷やさず、お薬の消化を進めてくれます。
クミンシードや生姜をいれて作ることもあります。
牛乳を合わせるというのが意外に思いませんか?わたしは、なんとなく成分を膜で包んで吸収しづらくしまいそうなイメージがありました。
でも、アーユルヴェーダでは、牛乳自体がお薬でもあり、油に溶けるものも水に溶けるものも溶け込ませるチカラがあります。牛乳自体の栄養も加わります。
ヴァータには適している一方、カパには注意が必要なので、他のものを指示されるかもしれません。
バターミルクは、バター(脂肪分)を取り出した後に残る液体です。さっぱりしていて軽く、ここにスパイスやハーブを加えることも多いです。
ギーは、バターから不純物や水分を取り除いたすましバターです。
牛乳と同様、ギー自体の栄養が加わります。
最も適しているとされるのがピッタ。そしてヴァータです。
こちらもカパには注意が必要です。
はちみつも、アーユルヴェーダではそれ自体がお薬になるもの。
お薬の味をよくしたり、お薬のチカラを高めたりしてくれます。
組み合わせる場合は、高温に熱しないなどの注意が必要です。
最も適しているとされるのが、カパです。
アーユルヴェーダにも、ジュースと合わせる方法がありました。
レモン汁、生姜汁、アロエジュースなど。
乾燥した性質をもつヴァータに多く、反対に水分の質を多く持っているカパには少なめ。
ピッタ 3、ヴァータ 2、カパ 1という説もあります。
どちらにしても、カパは少なめにしておくという認識でいいと思います。
普段の食事の水分量としても、参考になりますね。
こちらも普段の飲み物にも食べ物にも参考にしてください。
薬や食べ物そのものだけでなく、一緒に摂るものをどう組み合わせるかで、効果を高めたり、副作用を抑えたり、ドーシャのバランスを整えるなど、アーユルヴェーダがここまで細部にわたって考えられているのがすごいですよね。
覚えておきたいのは、お医者さんから処方を受けたけど特に指定がないとき、もしくはわからないとき。
そんなときは「水」にしましょう。
指定された場合は、そのアヌパーナを一緒に摂るように心がけてくださいね。