『ケララ秘伝
暮らしのアーユルヴェーダ』
伊藤武・田村ゆみ共著
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『アーユルヴェーダと〇〇 vol.1 パンチャカルマ基本編』田村ゆみ著
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刺繍が得意なトダ族の村へ③ニルギリの茶畑と村|タミルナドゥ州・ニルギリの続きです。
コーチン(コチ)空港到着の翌々日、遂にトダ族の村へ到着しました。
山に住むトダ族という言葉をみていたので、山岳部を想像していたのですが、緑が広がるなだらかな丘陵地帯でした。
こちらは、トダ族の村の中でもヘッドビレッジと呼ばれる主要な村です。
一般の集落にはお寺の数は一つですが、ヘッドビレッジには二つあります。
車から降りて、緑のエリアに入るときはサンダルを脱ぎました。
ここは聖域です。
インドはお寺などの聖域に入る時は裸足になるのです。糞には注意です。
トダ族の言葉は口語のみなんですって。
センテンスではなく音だそうで、何十年も通っているガイドさんでもわからないと言っていました。
ガイドさが唯一知っているという言葉を教わりました。
「ウルティッシヤー How are you?」
トダ族はルーツが不明だという文書を読んでいたのですが、実際に村で伺った話によると、ルーツはなんと紀元前5000年!
先日まで歌舞伎座で上演されていた、インドの古典マハーバーラタの5人兄弟の末裔とされていて、兄弟で一人の嫁という、同じ結婚の形を引き継いできました。
女性が妊娠すると、男性のうちの一人がその子の父親になります。
英国の統治時代に、結婚は一対一でするものだという教育を受け、現在は一対一で結婚するように変わったそうです。でも、妊娠7~8ヶ月になったら結婚するという流れは、今も変わっていないとのこと。
男性は、大きな石を首の周りに回せなくては結婚することができません。
村の男性たちは、小さな石から練習するのだそうです。
わたしたち外部の人間は、その石に触れるとこも、近くの椅子に座ったりしてもダメです。
トダ族は、トダ族内で結婚するので、人口は減少しつつあるそうです。2017年は1500人ほど。
どんどん血が濃くなってしまうため、20名に一人くらいの割合で障害を持つ子どもが生まれるのだそう。
障害を持って生まれた子は、男の子の場合ですが、ある年齢に達すると、大人の男性二人と共にお寺に籠るのだそう。
6~7ヶ月間、特別な時間を過ごし、そこから出てきたときにはグッと成長しているのだそう。
そこでどんなことが行われているのかは、外の者はわからないとのこと。
英国植民地時代、美しいトダ族の女性たちが数多く連れて行かれてしまいました。
連れて行かれないように、若い女性たちは入れ墨を彫って美しく見えないようにしました。
今でも老女の足には入れ墨を見ることができます。
知らずにみたら、「刺青を入れる伝統がある」のかと思ってしまいそうですが、身を守るための術でした。
トダ族にとって、水牛(バッファロー)は特別な存在です。
1990年ごろから大きな変化の波がきて、それでも1993年はまだ、トダ族の村に入ると、ミルク、ギー、バターミルク、糞など、バッファローの香りがしていたのだとか。
ダウリ(女性から男性側へ送る結納金のようなもの)も、昔はバッファロー。
今でも水牛が大切な存在というのは変わりがないものの、生活に占める割合はかなり減ってしまい、急速に伝統が廃れていってしまっているとのこと。
オリッサ州の少数民族の村を巡っていた時も、道路ができると物が手に入りやすくなり、外へ働きにいきやすくなり、他文化の流入が早く、お金が必要な生活が浸透していっていました。
伝統衣装からTシャツへ。
伝統の家屋からメンテナンスが楽な家へ。
神聖な紋様も手書きから、ステッカーやツールを使った簡略したものになるなどなど。
トダ族に関しては、日本では情報を入手しづらかったこともあって、今もみんな伝統衣装を着て暮らしている姿を想像していました。
でも、実際は街で会ったらトダ族とは気づかないであろう出で立ちでした。
ドダ族の村を訪れたかった一つの理由が建物です。
実際、村の多くの建物は伝統的なものではありませんでしたが、お寺は昔ながらの造りが継承されていました。
自然素材で作られています。石、牛糞、竹、草、茅葺き。
モチーフとして、トダ族が崇拝する自然、太陽、月、バッファロー、野菜などを見ることができます。
中に入ってみたいですが、お寺に入ることが許されるのはトダ族の男性のみ。
神聖なエリアにも入ることができないので、少し離れたところから眺めていました。
下の写真は、2つあるお寺のうち、小さい方。どうやって入るの?と思うような小さな入口です。
入り口が開いているときは、神さまが森へ出かけています。
今は閉まっているので中にいらっしゃいますね。
一般のお宅にもお邪魔しました。
昔ながらのかまぼこ形状で茅葺きなのですが、お寺とは違い土台の素材はメンテナンスがしやすいようにと融合した造りでした。
入り口の狭さが、ちょっと楽しい気分になります。外のベンチもいいですね。
家の内部は、かわいいピンク!
ご先祖さまの写真が飾られていて、みなさん伝統衣装でなんともかっこいい。
キッチンもベッド周りもキレイに整えられていて、使い込んだ調理器具も磨かれていました。
村の商店もかまぼこ形状でした。これは政府が建てたものなんですって。
みんなが出入りするためか、入り口は少し大きめ。
中から見ると、壁面は天然素材でした。
近くで採ったはちみつをご馳走になりました。
苦味が強いです!これははじめての味。どんな花から採れたのかなぁ?ニームかな。
伝統衣装を着させていただきました。
思ったより重く、思ったより暑くありません。二重仕立てです。
他のお宅へ伺うと、家の外に腰掛けて刺繍に精を出していました。
伝統的な衣装やアクセサリーを見せて欲しいとお願いすると、出てきたのはマフラーのような布に一部刺繍をしてあるような小物たち。
それはそれでステキなのですが、外国人向けに作られたものではなく、実際使っているものを知りたかったので、伝統的なものを見せて欲しいとお願いすると、新品の布や、途中状態の布をいろいろ集めてきてくださいました。
気に入った一枚を譲っていただけることになりました。
トダ族。女性たちの顔立ちが印象的で、力強い雰囲気があるのですが、振る舞いは控えめでシャイな感じ。ふと見せる笑顔に引き込まれました。
結婚式のような儀式のときは、他の村からも人が集まり、伝統衣装を身にまとって踊るのだそうです。
今回お世話になったガイドさんは、Ooty Trekkingです。
最後に、昔のトダ族の様子がYoutubeにあったのでどうぞ。
この時代に覗きに行ってみたいな。