『ケララ秘伝
暮らしのアーユルヴェーダ』
伊藤武・田村ゆみ共著
Amazon
『アーユルヴェーダと〇〇 vol.1 パンチャカルマ基本編』
オンラインストア
南インド・ケララの観光シーズンは、基本9月〜3月といわれます。
4月5月は暑く、6〜8月は雨季だからです。
観光シーズンは、お祭も多く、テイヤムのシーズンでもあり、なにより動き回るのが楽です。
でも雨季にわざわざ行きたくなる理由もあります!
有名なのが、ケララの雨季は浄化療法のシーズンであるということ。
現地のアーユルヴェーダ病院も、カラリの診療所も忙しい季節です。
また、森の緑が輝き、川や水郷地帯の水が豊かな季節。ケララらしい様子が楽しめます。
そして、今回ご紹介する特別なお祭もあります。
それはケララ北部のKottiyoorというヒンドゥー寺院で開かれるもので、Kottiyoor festivalで通じますが、正式名称はVaishaka Mahatsavamです。
AROUND INDIAは、ケララ伝統武術カラリパヤットゥの師匠に、そのお祭りに連れて行っていただきました。
実は以前誘ってくださったとき、残念ながらタイミングが合わずご一緒することはできなかったのですが、写真を拝見して衝撃を受けました。
深い森・山々・茅葺き屋根の建物・豊かな水をたたえた池・伝統衣装、象、自然素材のパラソルを持ち行列する人々。まるで古代のケララだったのです。
コロナが落ち着き、Kottiyoorのお祭も通常通り開催される運びとなったので、雨季のケララを目指すことにしました!
Kottiyoor寺院は、西ガーツ山脈の鬱蒼とした森の中にあります。
近隣の町Thalassery、Kannur (Cannanore)、Mananthavadyからバスが出ていて、お祭期間中はThalasseryから臨時の専用バスも出ているそうです。時刻表やバス停は不明なので現地で調査が必要です。
一番簡単なのは、現地の旅行会社や宿泊先にタクシーを手配してもらう方法。
ケララ北部のカンヌール空港からは、およそ45kmの距離にあります。
Kottiyoor寺院の広さは、なんと東京ドーム9個分ほど!
川を挟んで二つの寺院から成り、一方のAkkare(別名 Kizhakkeshwaram)は一年のうちお祭の行われる28日間だけ出現します。
女性がこの地に入ることが許されているのは、このお祭期間のみ。
御神体のシヴァリンガムは、この期間以外は地中に潜っており、もともと誰かが作ったものではなく現れたもの(スワヤンブー)と考えられているのだそうです。
このシヴァリンガムが見つかった後に建立されたのが、もう一方のIkkare(別名 Vadakkeshwaram、Thruchherumana)。こちらは建築物で通年あります。
Kottiyoorは、ヒンドゥー教の神話Daksha Yajnaの舞台と考えられていて、ダクシナ カーシー(南部のカーシー、ヴァラナシ)と呼ばれる南インドにおける重要なヒンドゥー教の聖地のひとつです。
※ Daksha Yajnaの舞台と考えられている場所は、Kottiyoor以外にもあります。
Daksha Yajna (yagna)については、アニメでどうぞ▼
Daksha Yajnaから数世紀後、山の民が石で矢を研いでいると、その石から血がにじみ出てきたのだそう。
最高位ブラーミンカーストのNamboodiriや占星術師などに相談し、水、ギー、ミルクなどを使って血を止めようとしたものの一向に止まらず、最終的にココナッツジュースで止めることができた。
それにより、Kottiyoorでは今もココナッツジュースをささげる儀式が重要視されていて、数千個ものココナッツが集められ、お祭の最後に御神体に注ぐ(Elaneerattam)儀式を行うんですって。
シヴァはシヴァリンガムという形をとって、火に身を投じ亡くなったサティの傍にいると考えられているのだそうです。
Kottiyoor周辺は、他にもシヴァ関連のさまざまな神話に満ちているようでした。
そんなさまざまな伝説を伺いながら向かっていると、雨が降ってきました。
一気に暗くなり、遠くの山の方まで黒い雲が立ち込めています。
徐々に、前が見えないほどの豪雨になりました。
自然の中を歩かなくてはならないので、この雨じゃお詣りするのは大変!
しかも出発するときは晴れていたので、雨具も足りません。
お寺に着くと、たくさんの人が雨宿りしていました。
でも車から降りてすぐに、雨が止んで太陽が顔を出してくれたのです。
大雨の中での参拝を覚悟していましたが、かえって水を含んだ緑が美しくなってラッキーだったかもしれません。
お土産屋さん通りを抜け、橋を渡り、川で足を清めます。
空を見上げると、付近はまだまだ曇り空でした。
ここからは土足禁止です。
預かり所で履き物を渡すと、グループ分を紐で繋ぎ、引き換えにプラスチック札を渡してくれます。
手を繋いで、キャッキャと裸足で川を渡りました。
お寺への道は、ごつごつした石だったり、石畳のような通路に水が溜まっている不思議な道。
足裏は若干痛いですが、水の中を歩くのは気持ちがよかったです。
お寺に着くと、あの写真で見た古代ケララの風景が広がっていました。
池の中央の寺院も、周囲の建物もすべて茅葺き!
お祭りの後は、また鬱蒼とした森に戻るのです。
池の周囲の建物は、お祭り期間中に僧侶など関係者が滞在するとのこと。
寺院の回廊は水に浸かっているので、みんな水の中を歩いて参拝します。
白地の布に金糸は、ケララならではの衣装です。左の島の中にあるのはココナッツ。
数年ぶりの開催ということもあってか、御神体を目指す人々のパワーはすさまじい。
少しでも遠慮していると、すぐに列から弾かれしまい、御神体に近づくことができません。
「こっちよ!」「いらっしゃい!」と師匠ご一家のサポートで無事お詣りすることができました。
混む時期には、こんなに人がいっぱいになるそうです▼
サンダルウッドとトゥラシー(トゥルシ、ホーリーバジル)をいただきました。
トゥラシーは髪に差します。
サンダルウッドはマルマに塗布します。
カラリのチャンピオンであり、アーユルヴェーダドクターでもある師匠のお嬢さんに付けてもらいました。
自然と融合した寺院を参拝後は、川を戻って、靴を受け取り、反対にある寺院Ikkare(別名 Vadakkeshwaram、Thruchherumana)へお参りに行きました。
そして、これこれ!
これまで師匠の祭壇やご近所の玄関など、いろいろなところで見かけてたオーダプーブ(竹の花)。
お土産に買いました。
竹を割り、削って、専用のブラシでよく梳かし、ひっくり返すとお花のように広がります。
神話のダクシャのひげを表しているんですって。
あぁ、たのしかった。
カラリの診療所から、途中でチャイ休憩を挟みながら、片道70kmの旅。
帰宅後、ビリヤニをご馳走になりました。
診療や武術指導を終えてから連れて行ってくださった師匠とご家族に感謝です。