『ケララ秘伝
暮らしのアーユルヴェーダ』
伊藤武・田村ゆみ共著
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『アーユルヴェーダと〇〇 vol.1 パンチャカルマ基本編』田村ゆみ著
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美男カズラは蔓性の植物です。
すごく元気でうっかりするとすぐに「フェンスや他の木に巻き付いてしまうから」ということで、伐採するツルと葉をいただいてきました。
「サネカズラ(実葛)」という呼び名が一般的のようですね。
学名:Kadsura japonic
生薬名:南五味子
果実は、中国や韓国で生薬として用いられています。今の季節は、果実はありませんでした。
五味子(北五味子/オミジャ、Schisandra chinensis Baillon)の代用に使われているという記述が多くみらたものの、北里大学の漢方と鍼 2022年4月号には”関東以西に分布するサネカズラは南五味子と呼ばれますが北五味子の代用にはなりません”と書かれていました。
うーん、どっちが正しいの?
漢方のハル薬局の記述がヒントになりそうです。
”五味子には北五味子と南五味子があります。北五味子はチョワセンゴミシの果実で、南五味子は中国では Scisandra sphenanthera Rehd. et Wils、わぶ国ではサネカズラ Kadsura japonica Dunal の果実を指します。 ”(原文ママ)
すなわち、中国と日本では違う植物をさしている。
おそらく、中国の南五味子は代用になるけれど、日本の南五味子は代用にならないということではないかと。
また、生薬として用いられる果実に5味が含まれているのではなく、”『新修本草(唐本草)』によると、乾燥果実の皮と果肉が甘くて酸っぱく種子の中は辛くて苦く全体に塩辛い味があり「酸・苦・甘・辛・鹹」の五種類の味が揃っていることに因んだ”とあるので、実は甘酸っぱいということになります。
これまで甘酸っぱい五味子茶や、五味子ソースがけ杏仁豆腐をいただくたびに「どうして五味子という名がついているのかな?」と疑問に思っていたのですが、実だけでなく、植物全体で5つの味をもっていたのですね。
余談ですが、アーユルヴェーダには、三つの果実を組み合わせたトリファラ(トリパラー Triphala)という生薬が五味とれます。この場合は、塩味を除いた、甘・酸・苦・辛・渋の5つです。
さて、美男カズラに戻りましょう。
薬草療法ハンドブックに、主な用いかたとして”つるや葉の粘液を塗布、または整髪剤に。乾燥つる・葉を煎じて洗眼用に”とありました。
美男という名の由来は、武士が整髪料として用いていたからという説が圧倒的に多いです。
このようにビシッとまとめた髪に使っていたのかもしれませんね。
北尾重政(きたおしげまさ)、山東京伝(さんとうきょうでん), CC 表示-継承 4.0, リンクによる
整髪料の作りかたをチェックしてみましょう。
エーザイのくすりの博物館には、茎を細かく刻んで水に浸すとあります。
蔓性の茎を細かく刻んで水に浸しておくと粘質の液になり、ネバネバとなった樹液を鬢付け油の代用品としました。この樹液を整髪剤や養毛剤として、さらに薄めて洗髪剤にしたそうです。髪形を整えて「美男」になるという意味から、美男蔓という名称で呼ばれるようになったそうです。心地よい清涼感の整髪料のために、ネズ(杜松・クロベ・ジュニパー)やクスノキ(クス・樟・楠・樟脳・カンフル)を混ぜたものもあります。
薬草に親しむ-髪のお手入れ|くすりの博物館|エーザイ株式会社
熊本大学薬学部薬用植物園によると、茎の皮を剥いて水に浸けるとあります。
茎の皮を剥き,水を入れた一升瓶に入れておくとドロドロした液体を得ることができる.かつてはこれを整髪料としたため,ビナンカズラ(美男葛)と呼ばれる.この液体はヒビやあかぎれに外用する.
熊本大学薬学部薬用植物園データベース
どちらにしても、ツルを水に漬けておくだけでOK。
これらの記述から、頭につけて問題ない植物。
髪に良さそうで、頭皮に傷があっても大丈夫だということが見えてきます。
ちょうどよく、指が切れました。
ちょっと言葉の響きがこわいですね。笑
植物をいじっていたら、切り傷ができただけです。
思ったよりも深く切れてしまっていたようで、しばらくすると少し腫れて、触らずともジンジンと痛くなってきました。
美男カズラの葉っぱを揉んで、汁を出して傷口に塗りました。
さらにその上から、軽く揉んで柔らかくした葉っぱでくるみ、セロテープでくるくる巻いておきました。
その状態で、美男カズラの蔓を刻んだり、水作業をしていたら、腫れも痛みもひいていました。
普通なら悪化しそうな過酷な環境なのに不思議。
そのまま翌日まで貼り付けておいたら、かさぶたみたいになってました。よかったよかった。
手入れなしで邪魔になる程育った植物で、傷が治るなんて便利ですね。
葉っぱを水に入れて揉んでみたら、ケララで教わったハイビスカスの葉っぱから作るシャンプーのように、とろみのある液体になりました。硬いところは取り除きます。
これはシャンプーになるのでは?!
夜までそのままにしておいて、濾してみると、かなりトロトロ。
これは期待大。
ケララのアーユルヴェーダ病院 Greens製のニーリブリンガーディケラタイラムというオイルでヘッドマッサージして、30分ほど置いてから、この液体で洗ってみました。
軽いとろみで気持ちいいです。
乾かしてみると、オイル分が髪に残っていました。洗浄力は高くありません。
洗浄力をアップしたいときは、リタやシカカイを追加すると良さそう。
昔の人もシャンプーとして使うこともあったのかな?
もう少し調査してみると、広報あんじょうに掲載されていた野草歳時記(三井亨氏<城ヶ入町・安城市文化財保護委員>)に、ツルの部分をシャンプーに使っていたと書かれていました。
つるに熱湯を注ぐと、中の粘液質が溶け出してきますが、昔はこれがシャンプーとして使われ、ここから美男葛の名が生まれました。
広報あんじょう
オイルマッサージをせずに洗髪するのであれば、洗浄成分がマイルドでかえっていいかもしれません。
もしくは書いてある通り、葉ではなくツルを使うと、もっと洗浄力が高いかも?
ツルは切って水に入れると、ぱぁーっと中から成分が染み出してくるのが見えました。
養毛剤に使われていたという記述も見つけたので、葉っぱも茎も、ホワイトリカーに漬けてチンキにしてみることにしました。
できあがったら、スプレーに水とチンキ剤を入れて、寝グセ直しに使おうと計画中です。
一本の蔓は、加工せず、土に挿してみました。
あまりに適当なやりかた
美男カズラの成長力を過信しすぎかもしれませんが、定着することを願って。