『ケララ秘伝
暮らしのアーユルヴェーダ』
伊藤武・田村ゆみ共著
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『アーユルヴェーダと〇〇 vol.1 パンチャカルマ基本編』
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今回は、女性ならではのインド旅のお悩みにお答えします。
最初に少しこれまでAROUND INDIAが感じた、インドのトイレ事情についてご説明しますね。
まず日本とインドは「清潔」の概念が異なります。
インドの多くのお手洗いには、トイレットペーパーも生理用品を捨てるゴミ箱も備え付けられていません。
※空港など外国人が多いところは、備え付けられていることもあります。
生理用品の入手先は、スーパーマーケットや薬屋さんなど。おなじみのウィスパー Whisperなど、ブランド商品が各種買えます。
でも、インドの思春期の女の子のうち約20%は、生理中は学校を休むという統計もあります。
ナプキンはそもそも捨てるものであり、捨てるものにお金をかけることが理解されなかったり、高級品な外国の生理用品を買う余裕がない場合も多いようです。
イギリス王室、ヘンリー王子とメーガン・マークルさんの結婚祝いに、Myna Mahila Foundationがインド女性へのナプキン寄付を呼びかけたのも記憶に新しいです。
Prince Harry and Meghan Markle’s wedding charities: Myna Mahila Foundation
金銭的に余裕があるお宅でも、漏れにくい市販のナプキンは学校など外出時のみで使用し、自宅では古いサリーを使っているという意見もありました。
他人に見られないよう家の裏でこっそり燃やしているんだそうです。処分も大変!
あるイスラム教徒の男性は、お仕事の帰りに「奥さんに頼まれたナプキン買う」とお店に寄っていました。
男性が買い物に行くケースも多いので、思春期だったら余計に頼みづらいのではないかと思ってしまいます。
インドには生理期間中にはお寺に入ってはいけないなどのタブーもあります。
浄化療法パンチャカルマもお休みになります。
生理=穢(けが)れだと思ってる人も多いのですが、個人的には生理中の女性の疲れやすい体を案じる優しさから来るものだと感じることが多いです。
ケララの伝統武術カラリパヤットゥでも、祭壇の近くや道場には入りません。
生理中はお休みという認識は、カラリでは当たり前のことだったので、オープンに伝えるものかと思ってしまったこともありました。
若いお弟子さん「どうして今日はお休みなの?」
わたし「生理だからだよ」
近くにいた女性陣があたふた!!
女性陣「だめだめ、知らないから。理由は言う必要ないよ」
と教わりました。子供みたいに失敗しながら学んでます。
師匠や医師にだから伝える必要が出てきても、普通は男性には言わない。
日本の感覚で良さそうです。
そんなインドで、生理用品をテーマにした映画がヒットしました。
愛する妻が、不衛生なものを生理中に使っていることに気づいた夫が、安価で良いナプキンを作る実話映画「Pad Man」です。2018年公開。
インスタグラムで著名人がナプキンと一緒に自撮りする「恥ずかしいものじゃないよ!」という #padmanchallenge ムーブメントまで湧き起こりました。
インド人と日本人の両親の元に生まれた方が発案した、布ナプキンの機能がショーツに一体型となった THINX という商品もあります。
トレーニングショーツとも一体型になったデザインもあり、ランナー、ヨガの先生など、これまでより安心して人前に出られそうです。
ずれないスナップタイプの布ナプキンは、自転車で激痛だったのですが、この一体型タイプなら安心ですね。
ズレる心配もなく、干しているときも普通のショーツのように見えます。
漏れない、捨てる必要もない、普段のショーツのように干せる。インド旅でも使いやすそうですが、一点気になるのが、乾燥に時間がかかるということ。雨季は厳しいかもしれませんね。
AROUND INDIAは、生活クラブのノンポリマーのコットンナプキンを使っています。
コットンの漂白には、酸素系が使われています。漂白については表示義務があるので、お持ちの生理用品でもチェックしてみてください。
そして、通常よく使われているポリマーは吸収量が高いものですが、コットンと比べて、水分が蒸発するときに体温を2℃も奪ってしまうのだそうです。
エコや改革も進むインド。最近バナナの葉の繊維から作られたナプキンも登場しました。
外国への発送不可で、海外発行のクレジットカード払いもできませんでしたが、機会があったら使ってみたいものです。
タンポンは、かなり珍しいものみたいです。
女性ドクターや病院のスタッフたちに「これ何?」と聞かれ、説明するとみんなビックリ!
そこにいた女性陣に一本ずつプレゼントすると、恥ずかしそうに、でもちょっと楽しそうに、ポケットに大切にしまって部屋から去っていきました。
インド人女性のたった5%しか存在自体知らない
only 5% of the Indian women population are aware of this facility
また、こんな考えもあるようです。日本でも昔よく聞きました。
タンポンを使うと処女性が失われる
if a woman uses a tampon, it means that she isn’t a virgin anymore
アーユルヴェーダなどの思想が息づくインドの感覚を想像するに、体外に自然に流れ出ようとしているもの・排出されるべきものを、体内で吸い取り保持することは体に良くないと考えそうです。
アーユルヴェーダでは、ヨーニ ピチュ Yoni pichu という膣に薬を保持する治療法があるのですが、その反対のイメージです。
実際日本でも、タンポンやナプキンの使用をやめたら生理が楽になったという声も多く聞かれます。
数年前、月経カップも試しました。
月経カップとは、カップ状の医療シリコンを体内に入れ、月経血をそこに受けるものです。
インドのトイレ事情を考えると、ゴミが出ない、何度も使える(荷物が減らせる)、12時間ほど入れておいてもOK(長時間の移動のときも楽)など、メリットが多く感じたので、海外から取り寄せて試してみました。
残念ながら、わたしには合いませんでした。
経産婦用と非経産婦用など、サイズを選ぶことができるのですが、一番小さいサイズでも折りたたんで入れるとき、滑らずにかなり痛みました。
たたんだカップが体内で開く瞬間「ゴボッ!」となんか気持ち悪い。
真空状態になっているため、かなり取り出しづらく、生理中のデリケートな膣内に負担がかかっているように思いました。
空にしたカップは、トイレットペーパーでは拭きづらく、それをまた体内に戻すことに抵抗がありました。
手が汚れた状態で、個室から出て行くのも嫌です。
慣れるまでの辛抱と続けてみましたが、いつまで経ってもわたしには合いませんでした。
今は日本でも発売され種類も増えました。
使っている方にお話を伺ったら、特に問題はないとのこと。気になる方は試してみてくださいね。
生理用品の処分方法の話に戻りましょう。
私たちに日本人にとっても、生理用品はあまり見せたくないものですよね?
AROUND INDIAは、黒いビニール袋を携帯して、そこに捨てるようにしています。
ゴミ箱が付いているお手洗いで捨てたり、ホテルの部屋に戻って新聞紙に包んで捨てたりします。
あるアーユルヴェーダ病院では、施設の外にトイレにナプキン専用焼却炉が設置されていました。
このゴミ捨てミッションには注意が必要でした。
部屋から焼却炉までは距離があり、途中でスタッフから「どこ行くの〜?」と呼び止められることがあるのです。
慌てずにすむよう、ゴミは黒ビニール袋に入れてから、更に布のバッグに入れて、ちょっとしたお出かけを装っていました。
使用していないトイレに設置された生理用品専用焼却炉。
英語とマラヤラム語で、使い方が書かれています。
使用前に灰を捨てます。
機械の上にある蓋を開けて、使用済みナプキンを入れます。
たくさん入らないので、こまめに処分する必要があります。
蓋を閉めて、スイッチを押します。
焼却炉稼働中は、赤ランプが点灯。
次の人が、灰を捨てる。という流れです。
2018年インド旅は、ホテルに泊まるつもりだったので、使い捨てナプキンを持って行きましたが、突如家庭にお世話になることになりました。
黒いビニール袋にゴミを入れ、お出かけ前にこっそり弁護士である奥様に
AROUND INDIA「どう処分したらいいですか?」と尋ねると
奥様「車で走っているとき、窓から外に捨てちゃいなさい」
AROUND INDIA「ゴミ袋ごとですか?!」
奥様「そう、みんなそうしているのよ」
衝撃でした!これでは道端のゴミが増えるのも当然です。
もう一つ捨て方を提案されました。
奥様「洗ってからゴミ箱に入れて」
AROUND INDIA「洗うんですか?」
奥様「簡単よ。一晩水に浸けて絞るだけ」
AROUND INDIA「使い捨てナプキンですよ」
奥様「そうよ、洗えば家で捨てていいわよ」
二度目の衝撃でした。血液は捨ててはいけないようです。
家によっては、キッチンの煮炊きに使う薪の燃料になります。
男性がまとめてゴミを燃やすかもしれません。
そこに生理用品がゴミとして入っていたら、気持ち悪いですよね。
特に血液は汚いという考え方があるので、使い捨てナプキンの処分は、現地女性のやり方に習うのが、お互い気持ちよく過ごすヒントです。
こっそり聞いてみてくださいね。