『ケララ秘伝
暮らしのアーユルヴェーダ』
伊藤武・田村ゆみ共著
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『アーユルヴェーダと〇〇 vol.1 パンチャカルマ基本編』田村ゆみ著
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NHK BS1で放送された「市民が見た世界のコロナショック」で、インド・ムンバイでアーユルヴェーダ薬局を営む一家が取り上げられていました。
ご主人のヴィディヤナンドさんは、旅行代理店で働いていましたが、コロナで職を失ってしまったのです。
奥様が近所で アーユルヴェーダ薬局 を営んでいたため、そちらで働き始めました。
インドでは、モディ首相を筆頭に伝統医学省AYUSHが、アーユルヴェーダ、ヨガなどの伝統医学の普及に力を入れています。モディ首相の言葉をみてみましょう。
これは2014年AYUSH省を発足した時の、モディ首相の演説での言葉です。
「我々は、これからアーユルヴェーダに注目しなければならない」
「アーユルヴェーダと西洋医学を両立させるべきです」
「西洋医学は新しい病気を治すことができます」
「しかし、アーユルヴェーダは新しい病気を予防することができるのです」
インド伝統医学省AYUSHがすすめる「アーユルヴェーダ/ホメオパシー/ユナニ医学式コロナウィルス予防法」でご紹介したように、コロナ予防や、免疫力を高めるために、具体的にアーユルヴェーダのハーブを推奨して、多くの薬が発売されました。
ヴィディヤナンドさんの薬局でも、これらの薬を扱っているのですが、売り上げがあがらないのだそうです。その理由について、こう話します。
「値段が高いアーユルヴェーダの薬は、効果を発揮するまでに時間もかかります」
「そのため多くの人は、すぐに効果が生まれる西洋医学の薬を選びます」
「その方が経済的ですから」
ある日、風邪をひいた赤ちゃんと両親が薬局にきました。
3ヶ月間、1日2回投与する必要がある90ルピー(130円)の強壮剤をおすすめしますが
「ほかの風邪薬を飲んでいるからいらない」
と断られます。
「コロナ禍で収入が減った人たちには、アーユルヴェーダの薬は手が届かない」
のだそうです。
AROUND INDIAとしても、西洋医学との文化のちがいのようなものが障害になっていると思います。
たとえばインド人からアーユルヴェーダの相談を受けて、医師の処方を伝えると、西洋医学に慣れた人にとっては「薬の種類が多すぎる」「期間を短くして欲しい」「これは抜いてほしい」とご納得いただけないことがあります。
お金持ちでも、これまで治療法を探しつづけてきた人もです。
でも気持ちはよくわかるのです。
わたしも昔、文化のちがいのようなものを知らず、漢方薬の金額を聞いて高い!と思っていました。
身近で良くなった人がいれば信頼が高まる。お薬のことや、病気の成り立ちを知るなどで、少しずつ障壁がなくなっていくのではないかな?と感じています。
さてヴィディヤナンドさん一家のお話に戻りましょう!
一家の年収は、コロナの影響で3分の1になってしまいました。でも子供たちは
「パパが僕たちと遊んだり勉強を教えてくれたりするから」
とうれしそう。ヴィディヤナンドさんも
「家族と過ごす時間が、お互いにとって有意義なものだと知りました」
と話していました。
大切なものの価値観が変わったのですね。
12月4日、インド政府は世界的な関心の高まりを受け、アーユルヴェーダ輸出推進協議会の発足を決定
インドでは現在、アーユルヴェーダ、そして医療界に変革が起きています。
政府が、アーユルヴェーダ医師による一部の外科手術を認めると宣言したことに対して、西洋医学の医師会は反発。一方ユナニ医学の医師たちは自分たちにも外科手術を認めるようにと声をあげています。
アーユルヴェーダの医療機関は増え、統合や研究も進められています。
知り合いの先生たちによると、これまで興味がなかった人たちもアーユルヴェーダの薬を求めてくるようになったと言っています。
インド全体で、文化のちがいのようなものが受け入れられつつあるようです。