『ケララ秘伝
暮らしのアーユルヴェーダ』
伊藤武・田村ゆみ共著
Amazon
『アーユルヴェーダと〇〇 vol.1 パンチャカルマ基本編』田村ゆみ著
オンラインストア
AROUND INDIA田村ゆみです。
南インド・ケーララ(ケララ)州のアーユルヴェーダ病院に滞在していたとき、朝のお気に入りルーティーンができました。
アーユルヴェーダ病院を出発
この時間になると、大きな音でベルを鳴らして、ご開帳。
出勤前のアーユルヴェーダ病院のスタッフの参拝と一緒になることも。
近くのチャイ屋さんで立ち飲み。お寺の方と一緒になるのも日課です。
アーユルヴェーダトリートメントを約1時間
トリートメント後は、浸透させる時間をとるものが多いのです。この間に洗濯や勉強。
食堂で、みんなと一緒に朝ごはんをいただきます。
午前中の授業開始。
フランス人のヨガインストターさんと意気投合して、試験で忙しくても、前夜が遅くても、疲れていても、大雨でも、この日課を楽しんでいました。
まだスタッフも患者もみんな寝静まっている時間に、塀をよじ登ったり、大きな水たまりに落ちないように気をつけながら道を進んだり、近所のヒステリックな人に見つからないようにコソコソしたり!
寺院は静寂に包まれているのですが、一気にカーンカーンと響き渡る鐘の音が、静寂を砕きます。
わたしたちの気持ちもすっきり!
毎日が冒険のようでした。
ある日「お寺にプージャーをお願いしよう!」ということになりました。
プージャー pujaというのは、日本語だと礼拝、儀礼、祭祀。
たとえば、今回のようにお寺でしていただくのもプージャーです。
家でお祈りの儀式をするのもプージャーと呼びます。
お隣タミルナドゥー州出身のヒンドゥー教徒の患者さんや、ケーララ州出身のヒンドゥー教徒の患者さんも手伝ってくれ、まずは事務所で、プージャーを執り行う日程や種類の相談をしました。
このとき、自分の名前と一緒にナクシャトラ(星座)も伝えましたが、「ナクシャトラは、もしわからなければ大丈夫」だそうです。
簡単に調べられるので、ご興味ある方は、足の形までわかる?!インド占星術の星座を調べる方法でどうぞ。
日本でも厄除け、安産祈願、合格祈願など、さまざまな目的で祈祷を受けることができるように、インドの寺院でも目的に応じた祈祷が受けられます。
わたしたちが最初にお願いしたのは、Abhishekam アビシェーカム。
神さまに液体をかけ流すものです。
日本語では灌頂かんじょう/かんちょうと呼ばれ、お釈迦さまの誕生日には誕生仏に甘茶をかけたりします。
墓石に水をかけることも、灌頂と呼ぶようですよ。
わたしが初めてのインドから帰国したころ、上野にある明順寺で寺ヨガを主宰させていただいていました。
ご住職の法話ではじまり、私のアーユルヴェーダのお話、そしてヨガ、お茶会という流れだったのですが、仏教徒でない私にとって、日本のお寺とお近づきになったのは初めてのことでした。
仏教によって日本に根付いたインド文化や、仏教のおはなしとアーユルヴェーダの共通点、発見するたびにワクワクしました。
さて、ケララに戻りましょう。
こちらのヒンドゥー寺院では、神様にかける液体を自分たちで選ぶことができました。
私たちがお願いしたのは、牛乳とココナッツの2種類。
今回は、すごく使わせて欲しかった牛乳がありました。
それは、ご近所の搾りたてのもの。
飼い主さんはお寺の関係者でもあるのですが、いつもおおきな牛たちを綺麗にされているのです。
アビシェーカムは本殿の中で行われるので、わたしたちは少し離れたところからお参りしました。
ご本尊はクリシュナ神で、まずは衣装や飾りなどすべてが外され、後光(光背)も外し、キラキラとしたお姿があらわになりました。
祭司がマントラを唱えながら、丁寧に液体をかけていきます。
ていねいに拭き上げると、また新しい衣装や新鮮なお花を、ひとつひとつ飾りつけていきました。
いつも以上に清らかに見えました。
ある日、アーユルヴェーダ病院のドクターたちと話していたら、大切なものはお寺でプージャーしていただいてから身につけるという話がでました。
そこで先ほどの友人と「帰国前に、そのプージャーをお願いしよう」ということになりました。
わたしはマルママッサージに使うアイテムや菩提樹の実をお願いしました。
本当は、他にも持っていったものはあったのですが、プージャーできないというものもありました。
プージャーの手続きをしていると、お寺の方から「ガナパティーの護摩」が提案されました。
友人は、数日前にケガをして、腕を吊った姿だったのです。
ガナパティ(ガネーシュ、ガネーシャ、Ganesh、Ganapati)は、象の頭の神さまで、あらゆる障害を取り除いてくれ、物事のはじまりや、運転の前などにもお祈りします。
友人を心配してのご提案でしたが、わたしにとっても学びの後の節目だったので、ふたりでお願いすることにしました。
このお寺は回廊式で、左奥にガナパティーが祀られています。
その祭壇の前に護摩壇があり、祭司が座り、わたしたちは促されるまま、向かいに座りました。
こんなに近くで感じられ、とてもありがたい気持ちでした。
祭司は、さまざまな印を結び、マントラを唱え、炎にギーなどを捧げました。
これまでの祭司とは、またちがう空気感でした。
炎は、どんどん大きく美しくなっていって、生きているみたいでした。
わたしたちも炎に胡麻を捧げるよう促されました。
左手に器をもち、右手で胡麻をつまみ、頭上で円を描いてから炎に投入というする動作を、幾度も繰り返しました。護摩で胡麻って、不思議な一致ですよね。
Aval アヴァルという干し飯(別名:ポハ、チウラなどなど)をインド黒糖のジャガリーなどで調理したもの(多分 Aval Vilayichathu)も炎に捧げられました。
普段はお詣り後、白檀やクムクムという赤い粉を額や喉につけるのですが、ホーマの後は、炭のペーストをつけました。
プージャーをお願いしていた、数珠・マルママッサージ用のツール、菩提樹の実なども、美しくなりました。
また少しインドを知ることができました。