
『ケララ秘伝
暮らしのアーユルヴェーダ』
伊藤武・田村ゆみ共著
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『アーユルヴェーダと〇〇 vol.1 パンチャカルマ基本編』田村ゆみ著
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これまでインドでは数々のできごとに驚かされてきましたが、そのひとつが「記憶力」です。
ある日の電話口、長い番号を覚えなくてはいけない場面に遭遇しました。
手元にメモはない。どうしよう…。
周りには、5名ほどの子供たちが、わたしが電話をするのを眺めていました。カラリのお弟子さんたちです。日本語で話しているのがおもしろかったようです。
「今から口にする番号を覚えてくれる?」
「あなたはこれ」
「あなたはこれね」
と5桁くらいずつ、覚えてもらいました。
電話を切って番号を聞くと、全員が全桁をすらすらと口にするではありませんか!
全員です。しかも、なぜわざわざ分けて覚えるように言われたのか不思議そう。
これにはほんと驚きました。
普段から記憶することに慣れているこの子たちにとっては、一度言われただけの長い数字でさえ、たやすく覚えられるものだったのです。
一方わたしは、カラリやアーユルヴェーダを教わる時、すぐにメモします。
日本に帰国してからも、参照できるように、なんでもかんでもメモしていました。
写真撮ったり、動画を撮ったり。
でも現地のひとからは「何を書いているの?」と聞かれることも多かったのです。
体や感覚で覚えていく人が多いなか、わざわざ書く行為を不思議に思われたり。
貴重なきれいな紙を、惜しみなく使っていて贅沢だと思われることもありました。
インドで料理や舞踊を習った人たちも「現地のひとたちってメモしないで身につけていくよね」と言っていました。
わたしたちは、記憶媒体に頼ることで、その能力が衰えてしまったようです。
しかし、それを憂いても仕方がありません。
AROUND INDIA田村の父は、記憶するときに不思議な文章を作っていました。たとえば
「ものさしでオートバイを叩いたら、ブドウの汁がスカートにこぼれた」
学生時代から使っている記憶術で作った文章なのだそうです。
およそ60年前、神保町の三省堂書店(?)で渡辺彰平氏が実演販売されていたのが、その記憶術。
そこで本を購入して以来、使い続けているとのこと。知りませんでした……。
後年、渡辺彰平氏の息子(渡辺剛彰氏)が引き継ぎ、息子さんが書かれた「ワタナベ式記憶術」はAmazonなどで購入できます。
「ワタナベ式記憶術」著者の渡辺剛彰氏さんは、小さい頃にお父様から記憶術を教わり「たった2か月で司法試験に合格した」という強者。
しかも、司法試験の勉強を、大変で辛いものという感覚で必死にではなく、遊びのように楽しく覚えた。
すごくいいですよね。なんか健康的です。より身につくだろうし、活かしやすいはずです。
具体的な記憶術は本を読んでいただきたいのですが、ざっくり言うと、「数字を文字に置き換え」たり「連想を連結する」などして記憶していきます。
ゴロを作るのではなく、どんな言葉も日本語に置き換えてストーリーにして繋げていく手法。
奇想天外なイメージや、五感も使って覚えたストーリーほど、思い出しやすいとのこと。
お散歩しながらランドマークに紐づけて覚えたりするなど、さまざまな方法が紹介されています。
応用編には「失念術」なるものも。
イヤな記憶やイヤな気持ちになるものってありますよね。
それを、思い出したり見たりしたら、好きなもののイメージに置き換えてしまうんです。
そうしていくと、そのうち脳がバグって好きなものが浮かんでしまうそうですよ。
イヤなものって、記憶を反芻してしまいやすい。下手すると増幅して、余計な不安や怯えが芽生えてしまうもの。でもイヤなものが減らせたら、生きやすくなるでしょうね。
ただ、連想を連結するにもイメージをつくるにも、記憶の段階に進む前の準備は必要です。
ここが、わたしには少し時間がかかります。
活用し始めたばかりですが、忘れづらく思い出しやすくて、覚えてよかったです。
受験や資格など勉強を控える方にオススメです。