『ケララ秘伝
暮らしのアーユルヴェーダ』
伊藤武・田村ゆみ共著
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『アーユルヴェーダと〇〇 vol.1 パンチャカルマ基本編』田村ゆみ著
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「インドでお酒が飲めずにこまってしまった!」とおっしゃった方がいました。
お酒も楽しもうと思って、インドに行くと、日本よりもお酒に厳しい国だと驚いてしまうことでしょう。
インドのいくつかの州では、州全体が法律でお酒禁止です。
現在は、ビハール Bihar、グジャラート Gujarat、ミゾラム Mizoram、ナガランド Nagalandの四州だと思います。
州では禁止していなくても、禁酒日はあります。
たとえば、2021年の禁酒日を見てみましょう▼
1月26日の共和国記念日、8月15日の独立記念日、10月2日のガンジー誕生日および選挙日以外は、州によって異なる場合があるとのことなので、参考まで。
結構な日数が禁止されていますね。
ただ、これは公の話。どこでもいつでも誰かがこっそり飲んでいます。
ときおり、質の悪い密造酒を飲んで亡くなったというニュースも流れます。
お酒が禁止されているなら作ろうということです。
外国人が多く泊まるホテルでも、変わらず飲めそうです。
ただ、禁酒州のひとつグジャラートの家庭に滞在したとき
「外でお酒が飲める場所があると声をかけられても、絶対に誘いにのっちゃダメだよ。警察のトラップのこともあるから」
と言われました。トラップが存在するとは驚きです。
そちらのお宅では「冷蔵庫にお酒を用意しているから、飲むならここで」とのことでした。
他の土地では、ドアやカーテンをきちんと閉めて飲めば大丈夫だと聞きました。
禁酒日は、室内でこっそりなら大丈夫みたいです。
警察に捕まらないよう、外で飲みたくなったら現地滞在先の宿など信頼できるひとに確認すると安心です。
トディーというのは、インドの天然発酵させたお酒のひとつで、原料はヤシです。
発酵プロセスがヤシの木の上で行われるので、できあがったトディーは専門のひとが木に登って収集します。
トディーが染み出してくる様子はYoutubeでどうぞ▼
お酒を飲まない友人とトディーの話になったとき「飲む」と言っていました。
「トディーは酔わないし、お酒ではない」のだそう。
わたしにとってトディーはお酒。酔います。
アルコール分を調べてみたら8.1%ほどと、強いビールくらいありました。
でもトディは、ビールなど他のお酒とはちょっとちがう位置づけのようなのです。
東インド・オリッサ州の少数民族の村では、朝飲むといっていました。
子供たちも飲み、農業などの体力仕事にも元気が出ていいそうです。
エナジードリンクといった感じですね。
禁酒州の田舎在住のかたは、「男性が集まるとトディーを飲む」と言っていました。
わたしがアーユルヴェーダとカラリパヤットゥ目的でよく訪れる、南インド・ケーララ(ケララ)州北部の地元の神さまムタパン Muthappanはトディーがお好きです。インドのお寺でもお酒がOK。
トディーは、ヤシのエッセンス。
ヤシの種類によっても、木によっても味が変わり、甘かったりさっぱりしていたりします。
クジャクヤシ、パルミラヤシ、ココヤシ、ナツメヤシなど、いろいろなヤシから収穫するそうです。
さらに、時間でも味がかわり、収穫したばかりのものは甘く、時間が経つと酸味が増します。
収穫量は木によってちがいますが、一本あたり300リットルほども作り出すのだとか。
ケーララ(ケララ)ではKalluとも呼ぶのですが、翌朝はトディーを使ったカッラッパム kallappamという蒸しパンが出てくるとうれしい。ほんのり甘くて、ギーをつけながら食べるととってもおいしい。
ケーララ(ケララ)には、トディーショップ Toddy shopというお店があります。
多くは、道から少し離れた木々の近くや川べりなどに建っていて、店内が見えません。
ずっと「トディーショップに行ってみたい」と焦がれてきましたが、お酒を飲まない人はもちろん、お酒を飲むと周りに思われては困る人も行きたがりません。
「女性はやめたほうがいい」「あぶない」「混ぜ物がされていて質が悪い」と心配して、信頼筋からトディーを入手してくださったりして、トディーショップに伺う機会はなかなかありませんでした。
でもやっぱり気になるので、覗きに行ってみようと思いました。
ただ、女性ひとりは避けたい。ムンバイ在住でケーララ(ケララ)にルーツをもつヴィマルを誘ってみると、驚きつつも「自分も未体験」だと誘いに乗ってくれ、ご近所に住むイトコさんに情報を仰いでくれました。
イトコさんもトディショップに行ったことはないものの「仕事終わりに来るひとが多いだろうから、遅くとも4時ごろまでに行かないと酔っ払いが増えて危ない」とアドバイスをくれました。
ほかの友人たちも一緒に、オートリキシャ2台に乗り込み、あらかじめ目星をつけておいたトディショップに向かいました。
自然の中にぽつんと建つトディショップ。やっぱりいい感じです。
店内を抜け奥にいくと、水辺に建っているのがわかりました。
屋外の席も気持ちよさそう。
調理場には一般の食堂では見かけない料理がいっぱい!
壁に並べられた素焼きのポットは、トディー用!ワクワクします。
食べものは、いわし、あじ、貝をオーダー。
お酒には、辛いものやしょっぱいものを合わせるのかと思っていたら、やさしい味付けでした。
インドでは生野菜を食べることはほとんどありませんが、お酒の時はよく生野菜を一緒に食べます。
祀られている神様は、トディーがお好きなムタパン。
夕方にライトを灯すとき一緒に手を合わせていたら、オーナーさんがお下がりのトディーをくださいました。
オーダーしたトディは甘くて、お下がりのトディーは時間が経過して酸味がつよくなっていました。
2種飲み比べられたこともうれしかったです。
徐々に、仕事を終えたお客さんが増えてきました。
やはり男性のみですが、若い人もいっぱい来ていました。
仕事後に居酒屋に行くような感じで、上司と部下の組み合わせや友人同士。
みなさん「お酒とタバコだから」と撮影はNGでした。
飲んでいないところの写真は撮らせてくれるひともいましたが、念のため非公開にしておきましょう。みなさん静かに紳士的に飲んでいました。
「さーて、帰ろう!」と通りに出たら、流しのオートリキシャが走っていないことに気づきました。
やってしまった!!
お店に戻ってオーナーさんに相談するものの、困ったご様子。
わたしの知り合いのオートドライバーに電話してみましたが、運悪く遠方にいて来られず。
他のお客さんたちもみんな、知り合いを駆使して探してくれましたがダメでした。
都会だとUBERで呼ぶなんてこともできますが、ここにはアプリで呼べるようなシステムはありません。
バス通りまで歩いて、オートをつかまえることにしました。
雨の中、自然いっぱいの道を歩いていると、まるで遠足みたいでした。
ちょっと不便な立地のお店に行く時は、オートに待っててもらうなど、帰りの手段を考えておくことをうっかり忘れていました。
でも、最後の遠足も含めて、夢のトディーショップ体験は最高のひとときでした。
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